かべすのおしゃべり

歌舞伎を観たり歌舞伎の本を読んだり歌舞伎のこと考えたりのあれこれを書き残しておきたいなと思いました。

「若手歌舞伎」中村達史

中村達史さんの「若手歌舞伎」を読みました。

二〇十七年初版とありますので、出版から五年ほど経ちますか。

若手、と銘打ちながら当時からすでに重要な役どころを勤めていた方々はじめ、二〇二二年現在では中堅どころと呼んでさしつかえないような方々から伸び盛りの方々まで、今をときめく役者たちへの熱い想いと期待があふれんばかりの劇評役者評でした。

本書に描かれた役者たちの姿と、現在の彼らの舞台を重ねてみた時に、今も変わらぬ魅力だなと思えるところがたくさんある一方で、いやいやずいぶんと変わった、ずいぶんと進化飛躍したんだなあと思えるところもあり、五年と言う月日の持つ意味について考えさせられました。

一番それを感じさせられたのが、本書内で最も多くその名に触れられているんじゃなかろうかと思える吉右衛門が、今となってはもういないと言うことで、やはり五年は決して短い年月ではないなあと。。。

いろいろ考えさせられながら読み終えたそれらの劇評役者評と同じくらいに、本書で自分が「面白いな〜」と思ったのが、和角仁氏による跋文でして、中村達史さんが和角氏のもとに教導を乞いに訪ねてからの日々について

私は、まず中村君に、毎月、歌舞伎座の昼の部、夜の部をそれぞれ五回ずつ私と一緒に見ることを義務づけた。

そして

役柄によって定まっている〈手〉の置き方、〈煙管〉の持ち方、〈目線〉のあり方、それに〈着付〉〈履物〉〈歩行〉〈三段の昇降〉などという初歩的なものから、舞台上の役者の〈居所〉、〈台詞の活け殺し〉〈荒事風の発声〉〈竹本の力量〉〈型の種々相〉というやや高級な面に至るまで

を指導されたということです。

なるほど〜
プロの見る目というのは、こうやって出来上がっていくものなんですね。

そっかあ。。。
舞台を観ている間中いつだって「素敵!」「カッコいい!」と目をハートにしてそれだけで終わってしまうから、何十年と歌舞伎を観ていても、自分はいっこうに見巧者になれないんだな〜と。。。

#歌舞伎 #劇評 #若手歌舞伎