かべすのおしゃべり

歌舞伎を観たり歌舞伎の本を読んだり歌舞伎のこと考えたりのあれこれを書き残しておきたいなと思いました。

「夏祭浪花鑑」「雪月花三景」七月大歌舞伎

先日、歌舞伎座で七月大歌舞伎を楽しんできました。

ちなみに自分が伺ったのは7月18日、第一部から観劇の予定でおりましたが、歌舞伎座に着いたところで第一部出演者にコロナ陽性反応出たため上演中止とのアナウンスがありました。

この日は第二部と第三部は上演されましたが、翌19日はいずれも休演、20日の休演日をはさんで、これを書いている21日現在では、22日までは第一部第二部第三部ともに上演中止のアナウンスとなっております。

出演者や関係者の皆様に大事ありませんように、そして千穐楽までの間に一人でも多くのお客様が安心して舞台を楽しめますようにと祈るばかりです。。。

以下は第二部を観ての感想ほかメモ書きです。

まずは「夏祭浪花鑑」について、主な出演者下記でした。
団七九郎兵衛 海老蔵
一寸徳兵衛 右團次
お梶 児太郎
琴浦 莟玉
倅市松 堀越勸玄
磯之丞 廣松
おつぎ 齊入
堤藤内 家橘
お辰 雀右衛門
義平次 市蔵
釣船三婦 左團次

この夏祭、歌舞伎で自分が一番最近に観たのが昨年のコクーン歌舞伎でしたので、そのときの記憶と比較しながら観ているところがありまして、コクーンがセリフを中心にドラマの輪郭を明確に見せる演出だったこととの対比の中で、型を一つずつしっかりと見せて絵面としての印象を重ねていくという、歌舞伎本来の演出の特徴をあらためて意識できたのが、自分にとってまずは嬉しい体験でした。

今回の上演は住吉、三婦内、長町裏の三幕。

自分的には、三婦内での雀右衛門さんのお辰がやはり良かったな〜と、言いたいです。

「女が立つ/立たない」の三婦とのやりとりも、鉄火肌の姐御のカッコ良さに加えて、焼けた鉄弓押し当てて自分の顔に傷をつけるに至るまでの心理的な流れが、観ているこちらにも自然と伝わるようであったのが本当に素晴らしいな、と。

そして何と言っても「亭主が惚れているのは、ここでござんす」の決め台詞のカッコ良さ!

同じく三婦内では齊入さんのおつぎが、出過ぎず引き過ぎずのちょうどいい塩梅の中で場面の運びをしっかりと担っていると言った風が、「脇を固めるって、こういうことだよな〜」と、その味わいを噛み締めながら舞台を食い入るように観てました。

三婦内から戻って住吉の場は、児太郎さんのお梶が素敵でした。
団七と徳兵衛、渡り合う二人の間に割って入る姿に、俠客の妻としての勇み肌と気風の良さが漂っていてすごくカッコ良かった〜

右團次さんの徳兵衛も団七と渡り合う姿がスッキリと男らしくて惚れ惚れしますね。

そして今作のクライマックスである長町裏の殺し場は、何度観ても「よくできたシーンだなあ」と唸らさせられます。

絵画的な様式美、陰惨な殺しの向こうに宵宮の山車が見えるという比較の妙〜夏の夕暮れ、茹だるような暑さ、祭りの掛け声、生垣にほの白く映る夕顔の花、どうにも捻れてしまう会話、取り返しのつかない過ち、祭りの群衆に紛れて逃げてゆく殺人犯〜いつか見た悪い夢のような、そんな一場の凄み、素晴らしさ。

海老蔵さんの団七は過去にも何度か観てますが、以前が殺しの場の狂気が滲み出ているような演技だったのに比べて、今回は「殺したかったわけじゃない、でもこうなるしかなかったんだ」という逃れられない運命の表現に重きを置いているような、そんな印象を受けました。

今回も海老蔵さんの見得は絶品ですね。
あの眼光鋭い表情、身体のラインと肉付きが発する、凄惨さと官能の入り混じった説得力!

幕間はさんで「雪月花三景」

主な出演者、以下のとおりです。
仲国 海老蔵
女蝶の精 ぼたん
男蝶の精 堀越勸玄
虫の精 竹松、廣松、男寅、莟玉
小督の局 児太郎
仲章 種之助
八条女院 福助

こういうショーアップした群舞って、歌舞伎的なものを見せるイベントなんかだと映えそうですね。

前半が風情ある嵯峨野の草庵での福助さんと児太郎さんのやりとりだったせいもあり、後半の群舞のシーンも、自分は歌舞伎の踊りや芸を観るつもりの目で臨んでしまったので、どこを見るか視点の置き場が定まらないうちに、勢いとボリュームに圧倒されてあれよあれよと言う間に終わってしまいました。。。笑

違うものを観る目、違うものとして楽しむ心づもりが必要だったなと少し反省しました。。。

#歌舞伎 #歌舞伎座 #夏祭浪花鑑 #雪月花三景