かべすのおしゃべり

歌舞伎を観たり歌舞伎の本を読んだり歌舞伎のこと考えたりのあれこれを書き残しておきたいなと思いました。

「風の谷のナウシカ 白き魔女の戦記」七月大歌舞伎

昨日7月22日に、歌舞伎座七月大歌舞伎の残りの公演を全て中止するアナウンスが出ました。
猿之助さん菊之助さん米吉さんほか48名のコロナ感染が確認されたとのことで、皆さん少しでも症状が軽く、大事ありませんようにと祈るばかりです。

結果として、自分は上演中止になる前ギリギリ間に合って観劇できた形になってしまいましたが、第三部「風の谷のナウシカ」観劇しての感想や見て考えたことなどのメモ書きです。

主な配役は以下のとおりでした。
クシャナ 菊之助
ナウシカ 米吉
アスベル/口上 右近
ケチャ 莟玉
ユパ 彌十郎
マニ族僧正 又五郎

自分が観劇した7月18日は、丑之助さん寺嶋知世さんが体調不良で休演、米吉さんが幼いナウシカも演じる形に演出を変更していました。

今回のナウシカでは、なんと言っても米吉さんのナウシカの可愛らしさ、いじらしらに目を惹かれました。
優しくも一本芯の通った強さを秘めているナウシカという少女と米吉のニンがぴったりと言いますか。

対する菊之助さんのクシャナも素晴らしかったです。
菊之助さんのクールな見た目がクシャナという女性の造形にリアリティを与えているように思いました。
歌舞伎歌舞伎した台詞回しもクシャナというキャラクターに合っていたと思います。

そのほか、彌十郎さんのユパや又五郎さんのマニ僧正、いずれもアニメやコミックスからそのまま出て来たんじゃないかというくらいのそっくり加減。

今回のストーリー運びはクシャナという王女が親兄弟との骨肉の争いの中、あえて血塗られた修羅の道を歩むことを選んだ、選ばさせられてしまった宿命を際立たせて、普遍的なドラマになっていたと思います。

加えて、理想を唱えながらも同じく血塗られた道を選ばざるを得なかったナウシカという王女の葛藤もヒシヒシと伝わってきました。

クシャナナウシカという二人の王女、そして二つの国のドラマは、見ていてどうしたって今のロシアとウクライナを思い起こしますし、あるいはこの先米中と日本の間にあり得る話かもしれませんし、いずれにしてもファンタジーの夢物語などではない、身近で切実な話としても自分は受け取って観ていました。

この第三部、自分は妹と姪っ子を連れて観劇したのですが、二人とも「ナウシカの世界と歌舞伎の世界が混ざっててなんか不思議な感じだったけど楽しかった」と喜んでくれました。

三人で感想を語り合いながらの帰り道、先日観た「千と千尋の神隠し」の舞台と比べてどうだったか?という話題になりまして、歌舞伎ファンの間では「歌舞伎にとって新作、ナウシカをやることの意味」みたいな話題を時々耳にしますけれど、ジブリファンにとっては「ナウシカにとって歌舞伎が最適な演劇化かどうか」という視点なんだな〜とあらためて気付かされました。

#歌舞伎 #歌舞伎座 #風の谷のナウシカ