「信康」六月大歌舞伎
先日歌舞伎座六月大歌舞伎楽しんできた時の感想ほか、第二部の「信康」についてのメモ書きです。
主な配役は以下のとおりでした。
徳川信康 染五郎
松平康忠 鴈治郎
平岩親吉 錦之助
御台徳姫 莟玉
鵜殿又九郎 歌之助
奥平信昌 橘三郎
本多重次 高麗蔵
大久保忠世 友右衛門
大久保忠佐 坂東亀蔵
大久保良泰 廣太郎
築山御前 魁春
徳川家康 白鸚
もうね、これはなんと言っても、今の染五郎さんにこれをやらせるという企画の勝利だな〜と思いました。
最初、若さゆえの気のはやり(それさえ魅力的でしたけど)を見せていた信康も、逆境の中で親や周囲の人たちの想いを知り、そのうえで何を守るべきかを把握し、最後はそれらを守るために命さえ投げ出すという、このいい意味での優等生ぶりが、染五郎という役者にドンピシャだな〜と。
親や家臣たちの期待や愛情を一身に受けてすくすくと育ち、彼らに支えられて今の自分があり、そしてそのことを当たり前と思わず感謝する〜そういう信康のあり方も染五郎さんに重なって見えました。
染五郎という役者の、今だからこその魅力、今この瞬間の煌めきを閉じ込めたような舞台だと思います。
そして染五郎さん以外の配役も良かったですね〜
白鸚さんの家康は、これはもう言わずもがなの大きさ立派さ。
この頃の家康は確かまだ四十前で、武田軍から命からがら逃げた三方ヶ原の戦い(自戒のため例の有名なげっそりやつれた肖像画を描かせたんですよね)からまだ数年後、信長に家臣扱いされることにモヤモヤしていた頃のはずなんですけど、この白鸚さんの家康なら信長に打ち勝って今すぐにでも天下統一できちゃうんじゃなかろうかと思えるくらいの貫禄でした笑
鴈治郎さん、錦之助さん、友右衛門さん、橘三郎さん、高麗蔵さん〜古顔譜代の徳川家臣団も、それぞれの個性をしっかり印象付けつつ、役の上でも演者としても、ガッチリとスクラム組んでるような一致団結ぶりでカッコ良かったです。
そして、今回の「信康」について語るなら、これは絶対はずせないトピックス、魁春さんの築山御前と莟玉さんの徳姫の嫁姑バトルの面白いこと!
お二人とも見るからに憎々しいといった感じでは全くなく、うっかりと人の良さや可愛らしさがポロリしちゃいそうなギリギリのところで滲み出る底意地の悪さと気の強さのぶつかり合い、とでも言った風が観てて楽しくて楽しくて、30分でも1時間でも続けて観ていたかったくらいです笑
史実上の真実はわかりませんけど、築山殿と徳姫の不仲が原因で最終的に信康が自刃を迫られると言う、通説やこの戯曲において描かれる顛末の重さと苦さも感じさせられました。
嫁姑争いと言った日常の些細な悪意が発端で、大事な人同士の諍いなのに奥向きのことだからとそれを放置してしまう怠惰と油断がいつの間にかことを静かに悪化させ、後のことも考えずに「信長パパに言いつけてやる!」と感情のまま行動してしまう思慮不足が大きな悲劇を呼ぶと言うー
ああ、こういう形で取り返しのつかないことって人生にやってくるんだよなあって。。。
#六月大歌舞伎 #歌舞伎座 #信康