かべすのおしゃべり

歌舞伎を観たり歌舞伎の本を読んだり歌舞伎のこと考えたりのあれこれを書き残しておきたいなと思いました。

文楽「義経千本桜」国立劇場

昨日、国立劇場で五月の文楽公演、第一部/第二部/第三部とまとめて観てきました。

舞台観ながら感じたことや考えたことなどなど、忘れないうちにメモ書きしておこうかな〜と。

まずは第一部の「義経千本桜」について。
ちなみに昨日5/22は満員御礼でした。

今回の上演は、狐忠信に関わる段を中心に並べたという感じでしょうか。

主な配役は下記のとおりです。
伏見稲荷の段
 豊竹靖太夫/鶴澤清志郎
道行初音旅
 静御前 竹本錣太夫/竹澤宗助
 狐忠信 竹本織太夫/野澤勝平
河面判官館の段
 中 豊竹呂勢大夫/野澤錦糸
 切 豊竹咲太夫休演、竹本織太夫代演/鶴澤燕三
九郎判官義経 吉田玉助
静御前 吉田簑二郎
忠信実は源九郎狐 桐竹勘十郎

今回の公演、「文楽命名百五十年」と合わせて「豊竹咲太夫文化功労者顕彰記念」と銘打たれているのですが、その咲太夫さんが体調不良で休演。
とても残念ではあるものの、代演を勤められた織太夫さんの熱演〜迫力や力強さで押すだけではなく、時になめらかにスムーズに運ぶ緩急自在さを味わい、燕三さんとの掛け合いぶりを楽しみ、といった具合に堪能いたしました。

今回の四の切、なんと言っても圧倒されたのが、源九郎狐を遣う勘十郎さんでした。

舞台を縦横に駆け巡る白い狐、勘十郎さんご自身も狐火を散らした白い衣装からの早替わり、ケレンの連打、そしてあの幕切れでの宙乗り

この宙乗り、ただ派手な演出で耳目を驚かすといった体ではなくて、最後に法眼館も桜の木々もグーっと沈んでいく上を狐忠信と勘十郎さんがどんどん空へ空へと登っていくことで自分たち観客も、義経たちの人間ドラマを高いところから見下ろすパースペクティブを与えられる、その結果、人間や獣の業や因果を超えたもっと大きな何かを感じられる、そんな観劇体験でした。

幕が引かれた後もしばらく拍手が鳴り止みませんでしたし、拍手しながら自分もちょっとグッとくるものがありました。

#国立劇場 #文楽 #人形浄瑠璃 #義経千本桜