かべすのおしゃべり

歌舞伎を観たり歌舞伎の本を読んだり歌舞伎のこと考えたりのあれこれを書き残しておきたいなと思いました。

「あやめ浴衣」五月大歌舞伎團菊祭

五月の歌舞伎座で観た演目のあれこれメモ書き、第一部の「あやめ浴衣」について。

配役は以下のとおりでした。

芸者 魁春
船頭 鷹之資
水売り 歌之助
町娘 玉太郎
あやめ売り 新悟

第一部はこの「あやめ浴衣」の前が「金閣寺」で、筋書きにも「時代物の『金閣寺』をたっぷり楽しんだ後に、デザート味わうように楽しんでほしい」という趣旨の魁春さんの言葉がありますけれども、季節感あふれる唄と衣装に、水辺のあやめが目にも涼しげなセット、そしてベテラン若手いずれも魅力的な出演陣で、自分が甘いもの好きデザート好きだからというわけではありませんが、この「あやめ浴衣」、何度も、そしていつまでも味わっていたいと思わせる、そんな味わい深い一品でした。

なんと言ってもその魁春さんの芸者姿、粋筋の姐さんの婀娜っぽさが滲み出てて本当にカッコいい!

白地に柳の葉と飛燕を散らした衣装に白と赤の太縞の帯も、意匠が凝らされているのにスッキリとして涼しげで素敵でした。

自分、魁春さんの舞台はいつでも、役の性根を丁寧に掬い取られていることや、歌右衛門さまのお姿が二重写しにいつもそこに感じられることにまずは感動させられるのですけれども、その感動の合間のふとした折に、あの肩の薄さや襟元首筋の細さ儚さに目が行くたびに、愛しさというか切なさというか何かそういった想いが溢れて、胸がキュンと締め付けられてしまいます。

〜と自分で書いてて思ったんですけど、言ってることが恋してる人みたいで、なんだかおかしいですね笑

恋してるみたいという話で言いますともう一つ、自分、鷹之資さんの船頭にもハートを持っていかれてしまいまして。。。

あの浴衣の少しくだけた着方といい体の線と動きといい、「笑みを浮かべた」と言うよりはもっと親しみがあって、何なら「少しにやけた」とでも言いたくなる表情といい、まさに街の兄ちゃんといった風情が、愛嬌と色気も感じさせて素敵でした。

今回の船頭だけでなく、二月の「石橋」も十月の「太刀盗人」もそうでしたけれど、いつの頃からでしたか気がつくと自分、鷹之資さんが踊っていると、踊りのキレの良さや芯のブレなさ、勢い、体のライン、そして何よりも「踊っていて楽しい!」というオーラというかヴァイブスというか、そういったものに目を奪われて、ずーっと目が追ってしまう、目が離せなくなる、そんな状態になってしまいます。

あ〜。。。

もう若くもないおっさんのラブレターなんぞ机の引き出しに鍵かけてしまっとけと自分でも思いますし、夜中に書いたラブレターは出しちゃいけないとも言われますけど、よくよく考えてみたら、書き残すべき歌舞伎の知識や、記録として伝え残すべき歌舞伎の歴史や経験があるわけでもないのに、それでも歌舞伎のことあれこれ話したい書きたいと思うのなら、そこには歌舞伎というものへの愛しかないわけで、そもそもこのブログ自体が歌舞伎へのラブレターなんだったと思い直して、今回のこの落書きも読み返す前に投函しちゃいます!

#歌舞伎 #歌舞伎座 #團菊祭 #あやめ浴衣